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ヨーロッパカップ制覇!ハンドボール人生で初めての経験

ヨーロッパカップ制覇!ハンドボール人生で初めての経験

アスリートインタビュー

細江 みづき

プロハンドボーラー

2022.05.18

長い間記事が書けていませんでした。どう言葉にしたら良いのか分からない心境にずっといました。

ずっと苦しかった。ずっとずっと苦しかった。それが報われた今、改めて今の気持ちを言葉にしたいと思いました。ハンドボール人生初めてのゴールドメダル。

ヨーロッパカップの物語

年が明けてから、自分自身の調子はどんどん上がっていっていました。チームとしても、調子が良く、リーグ戦も勝利することができていました。ヨーロッパカップのトルコのチームとの試合でも、かなりのアウェーの中で、終始追う展開でしたが何とか引き分けに持っていくことができました。

そんな中、トルコから帰宅し、なんだか身体に違和感を感じました。

私を含めたチームの8名が新型コロナウイルスに感染。

1週間後に控えたホーム戦は延期することができず、残りのメンバーで戦うことが決定されました。祈るしかない中迎えたホーム戦。自宅のテレビで観戦。下のカテゴリーの子達のおかげで、勝利。絶体絶命の危機を、チーム全体で乗り越えることができました。

ウクライナチームとのセミファイナル

そして、セミファイナル。相手はウクライナのチーム。対戦が決まった1週間後に戦争が始まりました。試合はどうなるのか•••。ウクライナの隣国、チェコで試合が行われることが決まりました。

ウクライナのチームとの試合は、完全にアウェーの状況且つ、国家斉唱で涙する選手達、気迫が伝わってきました。最後まで戦い抜きましたが、アウェーでは1点差負け。

1週間後のホーム戦で2点差以上で勝つことが求められることになりました。

そして、試合2日前に同じポジションの選手が怪我をして、この試合で初めてスタートからの出場。私がやらなきゃ。という気持ちが大きく、試合前からかなりの緊張をしていました。

その時、ゴールキーパーの若い選手の子が、「私緊張しているんだっ。」って、声をかけてきました。それを聞いて、「私も!!!」と。

お互い気持ちを伝え合うことで、私の緊張は和らぎました。そして、プレーも緊張感が邪魔することなく、試合も勝つことができました。この時初めて、マイナスの感情は吐き出してしまった方がいい。と学びました。

ファイナルへ・・

そして、ファイナルの相手がスペインのチーム、マラガに決定しました。

それまでの対戦成績は、今シーズン練習試合も含めて4戦4勝。ファイナルの前に、カップ戦もあり、その相手もマラガに決定しました。

3週間で同じチームとの3試合。こんなことがあるのか•••と思う反面、チーム全体でどこかに大丈夫だろう。という気持ちが少なからずあったと思います。

ファイナルの1週間前のカップ戦。初戦で、3点差での敗北。そしてマラガはそのまま順調に勝ち進み優勝。チームの中で不穏な空気が流れていました。

空気を変えたのは、レジェンド

どこかチームが集中していないような、まとまっていないような雰囲気が流れていました。今までにも、問題はこれでもか!!と思うくらい、ここには書けないですが(笑)、ありました。

でも、明らかにこのままじゃ、ファイナルで勝つことはできない。

勝つチームではない空気が流れていました。監督も、その空気を変えようと試行錯誤していましたが、選手自身が変わろうと思わなければ変われない。

そんなストレスを個人個人が抱えていたと思います。

そんな時に、チームミーティングで、ゴールキーパースペイン代表のレジェンドが声を大にして、涙をこらえながら、チームに訴えかけました。

「私は、全てをかけてハンドボールをしている。息子には、試合で私が家にいなくなるたびに悲しい思いをさせている。他にも、他国から来ている選手もいる。家族と離れて、ハンドボールをしにきている。1週間後に迫っている大事な試合。来年には、また新たに選手が来るけど、今のチームは今しかない。来年のことを考えるんじゃなくて、今やらなければいけない。」

多くの選手が涙していました。何度もタイトルをとったことのある代表の選手が、こんなことを考えていて、それを選手に伝えてくれている。

いつも笑顔で、冗談ばかり言っている選手が、こんなにも熱い感情を持っているとは、私も正直驚きました。彼女はいつも他の人のことを考えていて、私が活躍しなくても、チームが勝てばそれでいいの。とずっと言っていました。だからこそ、今でも輝き続けるレジェンドなんだなっと思いました。

それからの練習は、誰が見ても分かるくらい全員の顔つきが変わり、勝つことだけに集中していました。

自分自身との戦い

カップ戦が終わってからの1週間は、本当に長かったです。

絶対に負けられない。そんな気持ちから、夜も十分に寝ることができず、ご飯も1日1食になり、自分を落ち着かせる為にも、何度も何度もビデオを観て、そして、緊張を和らげたく、緊張しまくっていると、チームメイトに伝え続けました。伝え続けている割には、全然緊張が解けませんでしたが•••笑

人生最大の試合が2試合待っていると考えると、苦しくて苦しくて不安でいっぱいでした。

そして試合

そんな中、自分で勝手にピリピリしてしまい、試合目前で監督と大喧嘩。

全然大したことではなかったのに、気に食わず、お互い言いたいことを言い合い解決することなく試合を迎えることになりました。ホーム戦ということで、応援の力を借りることができ、何とか4点差で勝利することができました。

ですが、私自身は1/5と、スペインに来て初めてこんなにシュートを外してしまったので、もう頭の中は相手チームのキーパーでいっぱいでした。

私が決めていればもっと大差で勝てて、アウェー戦にのぞめたのに•••と、次はシュートのことで頭がいっぱいになりました。

次の日の練習から、キーパーにどこを打てばいいの?と相談をし続けました。

スペイン代表で一緒にプレーしているから、ここを打ちなさい!キーパーを見て、しっかり待ってから打ちなさい!と言われていても、練習では止められてしまい、頭はパニック。分かっていても、どこ打てばいいんだよ!と自暴自棄になっていました。

毎日、毎日、相手のキーパーのことばかり話すので、もはや好きになってるでしょ!っと。笑

ホーム戦を勝利で迎えても、アウェー戦の方が難しい事は分かっていました。そして、差はたったの4点。

チームの代表が、カップ戦で負けた時にこんな事を言いました。

誰か1人でも、負けるかもしれないと思ってはいけない。

試合までの1週間、目を閉じればアウェー戦の光景が目に浮かんでいました。大差で勝っている状況。1点を争う展開。大差をつけられ、追いかける展開。全ての状況を想像していました。でも、その度代表の言葉が頭をよぎり、最後には必ず勝利している光景を想像しようとしていました。

今思えば、それだけでも違ったと思います。こんなに長い長い2週間はなかったです。いつの間にか体重も2キロ減り、それでも食べれる時に食事をし、これ以上筋肉を落とさないように、調整しました。いよいよ、決戦の地へ。

頭の中はハンドボールでいっぱい

前日に試合会場に行き、調整練習をしました。

バスケットの試合で使っている会場をマラガは決勝の場所として用意をし、観客も多く入れるように準備をしていました。見るからに完全にアウェーだなと、この時は私の心配よりもチームメイトが緊張していないかなっとなぜか人の心配をし始め、それに加えて自分の緊張もある為、ドキドキが倍になっていました。

練習が終わっても最後まで、シュートを打ち続け、チームメイトにもキーパーにも呆れられていました。

緊張がやばいんだよ~~~~っと言っていると、明日は試合を楽しみなさい。っと監督が言ってくれました。いつの間にか、監督との関係も落ち着いていました。

ファイナルのホーム戦が終わってから、マラガの試合を何十回と見ました。

チームメイトには、試合を見すぎて、頭おかしいよって言われ続け、チームメイトのプレーを切り取り、勝手に送りつけアナリスト的なことをして個人的に話したり、毎日、調子はどう?とチームメイトに声をかけ続け、前日、チームメイトが、もし勝ったら~という話しをしている中、「もしって言うな!」と喝を入れ始め、今できる最大の頭と心の準備をしていました。とうとう当日。

試合は午後8時の試合という事で、時間がありすぎました。それもまた、緊張を高めていくばかり•••

冷静を装っていましたが、頭の中は不安でいっぱい。笑顔の未来。涙の未来。頭の中は葛藤していました。この2週間本当にハンドボールのこと以外何も考えられなかったです。

いよいよ、決戦の会場へ。

初めての感情。初めての感覚

会場へ着くと、もうアウェー。最終的には、7000人以上の人が試合を観にきてくれていました。スペイン女子ハンドボール界での新記録とされています。

会場は、マラガの応援でいっぱい。緊張で倒れるかと思っていましたが、アップでコートに経った途端、一気に緊張がなくなりました。一気に。

この感覚は一生忘れないと思います。あれだけ、2週間緊張し続けていたのに、この光景を見た途端、喜びに変わりました。

これだけの人が試合を観にきてくれている。ワクワクに変わりました。チームメイトは私の緊張を心配をして、何人もの子が大丈夫?っと声をかけにきてくれました。

が、全然大丈夫なんだけど!っと自分でも訳が分からないほど、冷静になって試合を楽しもうとしていました。この冷静さにチームメイトもびっくりしている様子でしたが、私自身もびっくり。会場全体が私を応援してくれているようにも感じていました。

アウェーでの大逆転

試合が始まり、前半はなかなかシュートが決まらず、一気に5点差に。

やっぱりアウェーでの試合は簡単じゃない。分かっていた展開だからこそ、私に焦りはなかったです。ハームタイム、チームメイトは、こんな展開を想像していなかったのか、怒りに満ちていました。

罵声が飛ぶ更衣室。

いつもなら、私は黙って見ているだけでしたが、この時ばかりは発言がしたくなり、こうして行こうという思いを伝えました。

シュートを決めると静まり返る会場。ブーイングの声。あまりにも初めての経験で、人生でこんな経験ができるとは思ってもいませんでした。

重要な場面で、監督からの指示は間違えてしまいましたが(今ではめちゃめちゃ笑い話です)、最後の1秒までどちらが勝つか分からない展開で、あの状況でコートに立ってプレーできたこと、このメンバーと戦い抜いたことは、私のハンドボール人生で最高の経験になりました。

ちなみに、シュートは3/3。キーパー様様です。笑

2年前このチームに呼ばれて、半信半疑で来たスペイン。

こんな最高の結末が待っているとは、想像もしていませんでした。今でも夢みたい。

たくさんの感謝を伝えたいです。

めちゃめちゃ苦しかったけど、今は本当に最高の気分です。ありがとうEquipo。

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